Disaster prevention, mitigation

防災・減災

地すべり

地すべりは、地質構造や地下水を要因として発生し継続的に活動します。また、斜面災害の中では発生規模が大きく広範囲に被害を及ぼすため、対策の重要性が高いです。
地すべりはすべり面を境に斜面土塊が滑動するため、滑落崖や移動体からなる特徴的な地形を有します。そのため地形図や空中写真および衛星画像解析により地すべり地形を判読し、現地にて微地形(滑落崖・亀裂・陥没など)や地質構造・地表水・湧水などを確認し、地すべりの発生・活動機構を考察します。考察結果にもとづき対策工を検討し、施工された後も対策工の効果や地すべりの安定性をモニタリングします。

地形判読

地すべりは地質構造や地下水により形成されるすべり面を境に斜面土塊が滑動するため、滑落崖や移動体からなる特徴的な地形を有します。よって、地形図や空中写真および衛星画像解析により地すべり地形を判読します。

色別標高図(左)と地形図(右)

地表地質踏査

地すべり地形の判読結果を参考に、現地にて地すべりが形成する特徴的な微地形(滑落崖・亀裂・陥没など)や、地層の走向・傾斜・地表水・湧水などを確認し、地すべりの発生・運動機構を把握するための情報を収集します。

走向・傾斜の測定状況

地すべり解析

地すべり対策工を検討するために、地形判読や地表地質踏査の結果にもとづいて、地すべり発生の素因・誘因・発生・運動機構について考察し、地すべりブロックの区分図や地すべり断面図などに考察結果をとりまとめます。

対策工設計

地すべりの発生・運動機構・保全対象の重要度・想定被害程度などを考慮し、経済性・施工性・耐久性・維持管理性などを踏まえて対策工を検討・設計します。対策工は安定解析を行い安全率を満たす工法を選定します。

CG地すべり対策工図

災害危険区域設定

土砂災害による災害危険区域を数値シミュレーション解析などで推定し、ハザードマップや土地利用計画に活用するとともに、危険の周知、警戒避難体制の整備、避難訓練などに役立てます。

ハザードマップ作成例

地すべり監視

地すべりの滑動状況を経時測定し、一定の変位が観測された際に通行止などの対応を行います。当社では、地表面の傾斜・移動量や地中のひずみ量を携帯電話回線でリアルタイムに確認できる計測機器を開発・販売しています。

地すべり監視機器のイメージ図

地すべり防止施設点検

地すべり防止施設は経年劣化や地すべり再滑動により機能・性能が低下します。劣化・腐食・損傷・変形の原因やメカニズム、進行速度などを考慮し、点検・健全度評価・対策優先度検討・修繕計画策定を行います。

集水井の点検状況

斜面崩壊

斜面崩壊は、傾斜角30°以上の斜面表層の土砂や岩石が急速に滑り落ちる現象であり、地形・地質条件などによる素因と地震・降雨などによる誘因が重なって発生します。よって、対象斜面における地質的特徴や降雨特性に応じた対策方法の立案が求められます。
当社では、半世紀以上にわたる地質コンサルタントとしてのノウハウと経験により、急傾斜地対策に関わる一連の業務における技術的支援を行っています。また、UAV(LiDAR・空撮)から地形状況を3次元的に把握したうえで落石シミュレーション解析を実施し、精度の高い落石対策工設計を行っています。

計画・調査

斜面崩壊による被害程度や保全対象の重要度などを考慮し、斜面災害対応の方針を計画します。また、机上調査では地形・地質状況や既往災害を確認するともに、現地調査では斜面崩壊の発生状況や土質・地盤状況を確認します。

斜面崩壊箇所の調査状況

落石シミュレーション解析

斜面において落石のおそれがある場合、地形形状・落石形状・落石重量・反発係数・摩擦係数・粘性係数などをパラメータとして落石シミュレーションを行い、落石経路・跳躍高・加速度・衝撃エネルギーなどを推定します。

落石シミュレーションによる落石経路の推定

対策工設計

落石シミュレーションにもとづき落石予防工や落石防護工を設計します。落石予防工は落石の発生源で落石の発生を予防し、落石防護工は斜面途中で落石の運動エネルギーを吸収・消散させて保全対象への到達を阻止します。

急傾斜地対策工

森林

我が国は国土面積の約70%が山岳地帯であり、67%を森林が占めているため緑豊かな国土になっており、水源や美しい景観など森林から多くの恩恵を享受しています。一方で急峻な地形と脆弱な地質構造・施業放置林の増加・近年の降雨の激甚化や頻発化などにより山地災害が後を絶たない状況となっています。
治山事業は、健全な森林の育成を図り、水源涵養や土砂流出の防止・森林生態系の保全促進などを目的としています。
当社は、荒廃地を安定化させる治山施設の調査・計画、設計を行うとともに、森林整備計画を立案し健全な森林環境の保全に取り組んでいます。

森林整備計画

地域事情に順応した森林整備を推進するため、地域の森林・林業の特徴をふまえ、森林整備方針・森林施業・森林保護の方法・路網整備方針などを検討し、長期的な森林づくりを計画します。

環境資源量調査状況

治山計画

土石流・地すべり・山腹崩壊などの山地災害によって人家や公共施設(学校、病院、道路など)が被害を受けるおそれがあるところや、重要な水源流域などにおいて、治山施設整備方針や防災林整備方針を計画します。

治山計画における現地踏査状況

荒廃現況調査

土石流・地すべり・山腹崩壊などの山地災害よる森林の荒廃状況を把握するとともに、既存治山施設の状態を確認します。近年はUAVによる空中写真撮影により、対象地区の状況を迅速かつ俯瞰的に把握できるようになっています。

渓流の荒廃現況調査状況

渓間工設計

渓流の縦侵食・侵食の防止による渓床の安定、山脚固定および土砂流出の抑止・調節を行う対策施設を設計します。荒廃状況や地形・地質状況を考慮し、治山ダムなどの位置や形状(放水路・袖・断面など)を設計します。

治山ダム

山腹工設計

山腹斜面を安定化させて植生を導入し、表土の風化・侵食・崩壊の拡大を防止するための対策施設を設計します。工種は山腹基礎工・山腹緑化工・落石防止工に大きく分けられ、荒廃状況や地形・地質条件に応じて選定します。

山腹工(上:法枠工 / 中間:土留工 / 下:籠マット)

林道設計

森林経営効率化・林業や木材産業育成・森林の整備や維持管理の促進・森林の多面的機能の持続的発揮などを目的に、経済性・機能・性能・安全性・耐久性・維持管理性・山村地域の振興・生活環境改善などを考慮して設計します。

空間情報活用

地形情報・設計・ボーリングデータなど位置情報を持ったデータをGISソフトや3D CAD(3次元製図ソフト)で管理・加工・解析・分析します。
例えば、地すべり対応では、「UAV-LiDARから得られた3次元地形データ」と「地質調査で得られた地質データ」を組み合わせ、3次元地質モデルを作成しています。また、地形や地下構造・地下水分布などで3次元的な評価が必要なため、作成した3次元モデルを活用することで考察や評価がしやすくなります。
さらに、3次元モデルの活用により計画・調査・設計・施工・維持管理といった建設プロセスがシームレスになり、インフラ事業全体の生産性向上が期待できます。

干渉SARを用いた地形差分解析

地球観測衛星の合成開口レーダ(SAR)を活用し、時間をおいて2回観測(二時期差分干渉SAR解析)することで、地すべりの経時的な動きの「方向」と「移動量」を数㎜~数㎝の精度で計測します。

干渉SARの差分解析結果

LiDARおよびGNSS/GPSを用いた地形測量

LiDARは、レーザー光を照射して反射光から距離を測定し、物体の形状を把握する計測技術です。この技術をGNSS/GPSに応用して点密度100~300点/m²で地形測量し、地すべりなどを3次元で可視化させます。

LiDARを用いた変動差分解析

GISを用いた地形解析

地理情報システム(GIS)は、位置情報を持った空間データを管理・加工し、解析・分析したり視覚的に見やすくしたりする技術です。地形解析による土砂災害危険箇所の抽出や、施設の補修設計の優先度設定等に活用しています。

急傾斜地の抽出状況

UAVによる被災状況把握

UAV撮影・測量により、被災範囲を3次元で可視化するとともに、被災状況の全体像を把握します。地すべりや崩壊地は数haに及ぶ広範囲で被害を及ぼすことがあるため、空中からの広域的な情報取得は状況把握に有効です。

地すべり災害発生時の状況

3次元モデル・CIM活用

測量、設計および地質情報を3次元モデル化します。地すべり対応では、地形・地質構造・地下水分布などで3次元的な評価が必要なため、3次元モデルを活用することで考察や評価をしやすくなります。

3次元モデルを活用した道路設計

砂防

砂防施設は土石流などの土砂災害から人命・財産・社会基盤などを守る重要構造物です。
土石流は渓流内に堆積する不安定土砂が地震・降雨などにより流動化し、渓岸崩壊土砂や流木を伴って発達しながら一気に下流へと押し流される現象で、40km/hの速度に達することもあります。そのため広範囲の人家・畑・道路などを一瞬にして破壊・埋没させ甚大な被害を及ぼします。
当社は土石流による災害の未然防止および災害発生後の早期復旧のため、砂防計画から設計および維持管理に至るまで事業全体をサポートし、安心・安全な社会づくりに貢献しています。

災害危険区域設定

土砂災害による災害危険区域を数値シミュレーション解析などで推定し、ハザードマップや土地利用計画に活用するとともに、危険の周知・警戒避難体制の整備・避難訓練などに役立てます。

ハザードマップ作成例

砂防調査・計画

砂防調査により、地形や地質条件・不安定土砂の堆積状況・崩壊の発生状況・保全対象の状況を確認します。調査結果にもとづいて、計画規模(発生土砂・流木量)・氾濫開始地点・保全対象などを設定し砂防計画を立案します。

砂防調査における現地踏査状況

砂防施設設計

土石流により発生する土砂や流木を砂防施設により処理するため、砂防施設の種類と配置を計画・設計します。砂防施設は砂防堰堤・流木捕捉工・遊砂地などがあり、土砂の流下形態や目的に応じて施設を選定・設計しています。

砂防堰堤

土石流シミュレーション

氾濫シミュレーション解析や水理模型実験により土石流の被害予測を行い、土石流災害を防ぐためにどのような施設をどこに配置すれば良いか比較検討し、砂防計画の立案や砂防施設の設計をします。

土石流シミュレーション結果

河川

河川計画は洪水や高潮等による災害の防止・軽減と、河川の適正な利用および流水の正常な機能の維持を基本方針としています。
河川構造物は護岸・樋門・床止め・堰・水門・排水機場があり、河川固有の河道特性・周辺環境・利水状況・自然条件などを考慮する必要があります。
このような河川計画の基本方針にもとづき、当社では経済性・安全性などのトレードオフを克服しつつ、最小のコストで最大の治水安全度を最速で確保できる堤防計画設計を行い国土交通省の局長表彰を受賞した実績があります。

河川計画

洪水や高潮等による災害の防止・軽減と、河川の適正な利用および流水の正常な機能の維持を目的として、基本高水・洪水調節施設への流量配分・計画高水流量・正常な機能維持のため流量などを設定します。

浸水範囲の推定図

河川構造物設計

河川構造物には護岸・樋門・床止め・堰・排水機場などがあり、河川特性や自然的条件を考慮して設計します。近年は自然災害の激甚化にともなう耐震性向上のための改築設計や、補修・補強設計のニーズが高まっています。

樋門

河川堤防設計

河川計画で設定された計画高水流量を安全に流下させる河道断面を確保するため、必要な堤防高を設定して堤防設計を行います。設計の際は、過去の浸水履歴・軟弱地盤対策・堤防質的整備状況などを考慮する必要があります。

堤防完成予想図

堤防浸透対策設計

浸透流解析(FEMによる地下水シミュレーション)により、洪水時に河川堤防が法すべりやパイピングによる浸透破壊を起こさないか解析・検討します。安全率が不足する場合は、揚圧力を低下させる対策工などを検討します。

浸透流解析

海岸

当社では津波対策に関連する業務を主に行っています。
津波堆積物調査では、津波堆積物の分布や堆積状況から過去に発生した津波の浸水域・波高・遡上高などを推定します。
津波を引き起こす海溝型の地震は周期性があり、今後発生する津波災害を予測できるため、津波防災地域づくりの基礎資料となります。また、津波防災地域づくりの業務として津波浸水シミュレーションを行い、結果にもとづいて津波災害警戒区域の設定を行っています。警戒区域はハザードマップなどのとりまとめ、土地利用計画や警戒避難体制の検討に活用されています。

津波堆積物調査

津波堆積物の分布や堆積状況から、過去に発生した津波の浸水域・波高・遡上高などを推定します。津波を引き起こす海溝型の地震は周期性があるため、今後発生する津波災害を予測でき、津波対策に向けた基礎資料となります。

津波シミュレーション

シミュレーション解析結果から浸水範囲や引き波による海底露出範囲を予測し、予測結果にもどづいて防潮堤や護岸設計を行います。また、ハザードマップの作成や避難所・避難経路の検討などソフト対策にも活用します。

津波シミュレーション結果

津波避難階段設計

津波発生時における住民の迅速な高台への避難を可能とする避難階段を設計します。保全対象の分布や津波浸水予測、避難所要時間などを考慮して、避難階段の昇り口・降り口・延長・折れ数などを検討・設計します。

津波避難階段

防潮堤設計

防潮堤は高潮や津波による被害を防ぐ堤防であり、地震動や波の力に対応した構造が求められます。そのため、地震応答解析により横揺れの力や液状化の影響を考慮したり、構造部材の応力を照査し設計を行います。

防潮堤の施工状況

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